【人事労務ニュース】 高額療養費の現物給付化が外来窓口の支払いでも始まりました
健康保険制度には私傷病により医療機関にかかり、1ヶ月間(1日から末日まで)に医療機関や薬局(以下、「医療機関等」という)の窓口で支払った医療費が高額となった場合、申請を行うことで後から自己負担限度額を超えた額が払い戻されるという高額療養費制度があります。この制度では、いったん窓口で医療機関等から請求された医療費を支払い、後日払い戻しを受ける仕組みですが、平成19年4月から入院について、窓口での支払いを自己負担限度額までとする現物給付化が行われています。そして、今年の4月1日からは外来診療についても、現物給付化が始まりました。
1.制度適用の流れ
高額療養費の現物給付化の適用を受けるためには、事前に限度額適用認定証(以下、「認定証」という)の申請をしておき、それを医療機関等の窓口で提示することとなります。なお、協会けんぽの場合は以下の流れとなります。
(1)限度額適用認定申請書に健康保険証のコピーを添付の上、健康保険証に記載されている協会けんぽ都道府県支部へ提出する。
(2)概ね1週間から10日後に認定証が発行され、被保険者に送付される。
(3)交付された認定証と健康保険証を併せて窓口で提示する。
※70歳以上の方や所得区分によっては取り扱いが異なるケースがあります。2.高額療養費における所得区分と自己負担限度額
高額療養費の自己負担限度額は被保険者の所得区分によって異なり、具体的には下表のとおりとなります。3つの所得区分に基づいて1ヶ月の自己負担限度額の上限額が決まります。
被保険者所得区分 自己負担限度額 多数該当※2 (1)上位所得者(標準報酬月額53万円以上) 150,000円+(総医療費−500,000円)×1% 83,400円 (2)一般所得者((1)および(3)以外) 80,100円+(総医療費−267,000円)×1% 44,400円 (3)低所得者※1 35,400円 24,600円 ※1 被保険者が市区町村民税の非課税者等である場合。なお、被保険者が市区町村民税が非課税等であっても、上位所得者に該当する場合の所得区分は上位所得となる。
※2 療養を受けた月以前の1年間に、3ヶ月以上の高額療養費の支給を受けた(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)場合には、4ヶ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減される。
現物給付化の適用を受けない場合には、自己負担限度額を超えた額が払い戻されるまで3ヶ月から4ヵ月程度かかっており、医療費を一時的に立て替えることが被保険者にとって大きな経済的負担となります。外来診療にも現物給付化が広がったことで、被保険者の負担が少なくなるため、従業員が大きな病気やケガをした場合には、情報提供するようすると良いでしょう。
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。