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【人事労務ニュース】 新入社員を迎え入れるにあたり知っておきたい身元保証書作成のポイント

 4月は新入社員を迎え入れる季節ですが、このように従業員を雇い入れる際、身元保証書を提出させている企業が多いのではないでしょうか。しかし、この身元保証書を効果的に活用するためにはいくつか知っておきたいポイントがあります。そこで以下ではこれらのポイントを1.身元保証人の条件、2.身元保証書の有効期間、3.身元保証人への通知義務という3点に分けて解説します。

1.
身元保証人の条件
 そもそも身元保証書は、従業員が企業に一定の損害を与えた場合に、従業員と身元保証人が連帯してその損害を賠償することを約する契約です。よって、身元保証人は誰でもよいという訳にはいきません。実務的には、独立した生計を営む成年者というようにその資格を定めたり、複数名の身元保証人の選任を求めるなどの対策が求められます。

2.
身元保証書の有効期間
 身元保証書を入社時に取っておけば、退職時までその効力が有効であると考えている方が多いのではないかと思いますが、この点については法律の規制が存在しています。具体的には身元保証に関する法律の中で、身元保証契約の期間を特に定めていない場合は3年間、期間を定める場合であっても最長5年間とされており、仮に5年以上の期間を定めたとしても5年間に短縮されることとなります。また身元保証契約を更新することもできますが、その場合でも最長5年間となりますので注意が必要です。こうした前提から、実務としては身元保証書においては、その身元保証期間を5年間と定めること、そして5年経過後は横領などのトラブル発生リスクが高い部門を中心に必要に応じて契約の更新を行うことが重要となります。

3.
身元保証人への通知義務
 身元保証契約に関してこのような規制が加えられている背景には、身元保証人が過度な責任を負うことがないようするという配慮があります。この観点から、会社は従業員に以下のような状況が発生した場合には、遅滞なく身元保証人にこれを通知しなければならないとされています。
(1)従業員に業務上の不適任または不誠実な行動があり、身元保証人の責任が発生する恐れがあると知ったとき
(2)従業員の職務内容や勤務地が変更になり、身元保証人の責任が大きくなったり、その監督が困難になるようなとき
 この通知がきちんと行われていない場合には、身元保証人の責任を十分に追求できなくなることもあるため、実務としては従業員を配置転換したり、従業員に懲戒処分を課したような場合には、その内容を身元保証人に通知するようなルールを整備しておくことが求められます。


 以上、身元保証書作成の際のポイントについて取り上げましたが、意外に見落としていたという事項も多いのではないでしょうか。今後、身元保証書を作成される際にはこうしたポイントについて漏れがないようにして頂ければと思います。なお、身元保証契約は直接的には従業員が生じさせた損害を連帯して賠償させるというものですが、実際にはそれだけの効果に止まりません。入社の際に身元保証書を取ることにより、従業員の仕事に対する責任感を醸成し、また身元保証人から一定の監視が働く状況を作り出すことでトラブルを抑止する効果を期待することができます。更には実際にトラブルが発生した際にも、身元保証人と連携し、その解決を図ることもできるでしょう。近年は労働に関するトラブルが急増していることから、身元保証書を上手に活用し、そのリスクの軽減を図っておきたいものです。なお、身元保証書に関し、疑問点などございましたら、お気軽に当事務所までお問い合わせください。


 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。