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【人事労務ニュース】 採用リスクを軽減する試用期間の設定とその運用ポイント

 採用面接でその人材の本質を見抜くのは現実的には困難であり、それが故に雇い入れ後のミスマッチがトラブルに発展する例が絶えません。そこで重要となるのが、試用期間の設定です。具体的には多くの企業では、就業規則において入社後3ヶ月から6ヶ月程度を試用期間として定め、勤務状況、業務遂行状況、業務適性等により新規採用者を本採用するかを判断する期間としています。今回はこの試用期間設定の際のポイントについてお伝えしましょう。

 試用期間には労働基準法上の試用期間と、就業規則上の試用期間の2種類があるとされています。以下ではその違いについて見ていきましょう。

1.労働基準法上の試用期間
 労働基準法第21条が規定する「試の使用期間」のことであり、この期間において解雇を行う際には解雇予告が不要とされています。なお、その期間は雇い入れから14日間とされています。


2.就業規則上の試用期間
 企業の就業規則において規定する試用期間のことであり、新規採用者の業務適性等を見極める期間です。期間について法律の規定はありませんが、通常は3ヶ月から6ヶ月といった長さが一般的です。あまりにも長い期間の試用期間は無効とされる恐れがあります

 

 一般的に試用期間であれば、比較的自由に雇用契約の解消ができると思いがちですが、特に2.の就業規則上の試用期間については注意が必要です。そもそも、試用期間とはいえ既に雇用契約が締結されているため、試用期間満了時の本採用拒否は解雇に該当します。このため、労働契約法第16条に規定されているように客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でなければその本採用拒否は無効になります。ただし、試用期間満了後の本採用拒否については、通常の解雇の場合よりも広い範囲で認められるべきであるとした判例があるため、就業規則で試用期間を定めることは重要だといえます。

 就業規則で定めた試用期間を有効に機能させるためには、教育と指導が重要になります。試用期間満了後の本採用拒否は、通常の解雇より広く認められるといっても、実際に争いになった場合は、能力等の不足や、不足と判断した評価が妥当だったかが問題となります。万が一、争いになった場合に備えて、上司は繰り返し注意や指導を行い、その記録を残しておく必要があります。仮に、上司が再三指導を行ったにもかかわらず改善されなかったのであれば、本採用拒否が有効となる可能性は高くなります。逆にまったく注意や指導がなされておらず、上司が試用期間中の者に対して肯定的な評価をするような言動をとっていた場合は、本採用拒否を無効とした裁判例も存在します。

 就業規則で試用期間を設けているものの、新規採用者の問題に気付いた時点で試用期間は経過していたということが少なくありません。それだけに実務上は入社を1週間経過時点、1ヶ月経過時点などポイントを設け、現場からその業務状況について報告させるなど、試用期間を効果的に運用するための仕組みを整備することが求められます。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。