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【人事労務ニュース】 従業員の労働時間を適正に把握・管理する際の留意点

 各都道府県労働局や労働基準監督署は、厚生労働省が毎年策定する「地方労働行政運営方針」(以下「方針」という)に基づき企業を指導していますが、今年も4月初旬に平成24年度分の方針が厚生労働省から発表されました。

 その中には、長時間労働の抑制や賃金不払残業の防止のための監督指導等の法定労働条件の確保という項目があり、これらの課題に対応するためには、労働時間を適正に把握することが必要不可欠となります。そこで、今回は労働時間を適正に把握するための留意点について取り上げましょう。

1.労働時間を把握するための方法
 通常、出勤簿に押印することや、タイムカードに打刻することで、出勤の有無や労働時間を把握する例が多くなっていますが、厚生労働省が出している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(以下、「通達」という)では、始業・終業時刻の確認および記録の原則的な方法を以下のいずれかとしています。

(1)使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
(2)タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

(1)の自ら現認するという意味は、事業主や労働時間管理を担当する人が、直接、始業時刻や終業時刻を確認することであり、現実的にはすべての就業日について現認することは困難なケースが多いでしょう。したがって、(2)のようにタイムカードなどで記録をすることが原則となります。

2.自己申告制により労働時間管理を行う際の留意点
 上記の方法によらず、従業員自身の申告に基づかざるを得ないケースも考えられます。このように自己申告制をとる場合には、あいまいな労働時間管理になることを防ぐため、以下の措置を講ずることが求められています。

(1)自己申告制を導入する前に、対象となる従業員に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うなど、十分な説明を行うこと。
(2)自己申告によって把握した労働時間が、実際の労働時間と合致するか、必要に応じて調査を実施すること。
(3)労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定したり、時間外労働手当の定額払いなどの措置が適正な申告を阻害していないか確認し、必要に応じて改善すること。

 過重労働に起因する精神障害の発症や、未払い残業代のトラブルでは、実際の労働時間がどのようなものであったかが焦点となります。自己申告制による労働時間管理も認められてはいますが、企業としてはできるだけ客観的な労働時間把握ができるタイムカードの導入を行い、管理を進めていきたいところです。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。