【人事労務ニュース】 労働者名簿、賃金台帳等の保存期間
いよいよ今年も残すところあと10日余りとなりました。年末に大掃除を行い、保存している書類の整理を行われる会社も多いのではないでしょうか。その際、労働者名簿や賃金台帳、タイムカードなどをいつまで保存しておかなければならないのか判断に困ることがあります。そこで今回は、これらの書類の保存期間について解説します。
人事労務に関する書類の保存期間は、それぞれ適用される法令により定められています。以下では法令ごとに、その取扱いを確認していきましょう。
1.労働基準法に関する書類
そもそも会社が保存しておかなければならない書類の範囲としては、労働基準法第109条で、「労働者名簿、賃金台帳、雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」とされており、これらについては3年間保存することになっています。
ここで、「その他の労働関係に関する重要な書類」にはどのような書類が該当するのかが問題となりますが、これについては例えば、出勤簿、タイムカード等の記録、労働基準法に基づく労使協定の協定書や各種許認可書類などが該当するとされています。また、この書類には始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類も含まれ、例えば従業員自らが始業・終業時刻を記入している場合には、その書類や残業申請書などが該当することになります。誤ってこれらの書類を破棄しないようにしましょう。
2.労働安全衛生法に関する書類
労働安全衛生法に関する書類としては、健康診断に関する書類とそれ以外の書類の2つに大きく分けることができます。以下ではこれらのうち、多くの企業に当てはまる一般健康診断個人票と安全衛生委員会等の議事録について取り上げます。
まず、一般健康診断個人票とは雇入時の健康診断や定期健康診断などを実施した際に、会社が作成する書類であり、これについては5年間保存することが義務づけられています(労働安全衛生規則第51条)。一方、安全委員会や衛生委員会、安全衛生委員会を開催した際に作成する議事録については、3年間の保存が義務づけられています(労働安全衛生規則第23条)。
3.労働保険・社会保険に関する書類
労働保険に関する書類としては、例えば、雇用保険の加入手続きを行った際に発行される「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」、労働保険料を納付する際に作成する「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」の事業主控など、様々な書類があります。これらは、以下の区分に従って、それぞれ保存期間が定められています(労働者災害補償保険法施行規則第51条、雇用保険法施行規則第143条、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第72条)。
・雇用保険の被保険者に関する書類 4年間
・その他雇用保険に関する書類 2年間
・労災保険に関する書類 3年間
・労働保険料の徴収・納付に関する書類 3年間
次に、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する書類については、例えば、「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」や「標準報酬月額決定通知書」があり、厚生年金基金に加入している企業は、基金に係る掛金や標準報酬に関する書類も含まれることになります。これらの書類は、共に2年間保存することになっています(健康保険法施行規則第34条、厚生年金保険法施行規則第28条)。
下表は、上記の内容をまとめたものになります。なお、書類ごとに保存すべき期間を計算する際のスタート(起算日)が異なるため注意が必要です。
表 人事労務関連の主な保存期間
書類の種類 | 保存 期間 | 起算日 | |
労働 基準法 | 労働者名簿 | 3年間 | 退職等の日 |
雇入れまたは退職・解雇に関する書類 (例:雇用契約書、退職届) | 退職等の日 | ||
賃金台帳 | 最後の記入日 | ||
賃金に関する書類 | 完結の日 | ||
労働時間の記録に関する書類 (例:出勤簿、タイムカード、残業申請書) | 完結の日 | ||
労働基準法の規定に基づく労使協定等 (例:時間外・休日労働に関する協定届) | 完結の日 (協定の有効期間の満了日) | ||
各種許認可書 (例:解雇予告除外認定申請書) | 完結の日 | ||
災害補償に関する書類 | 災害補償の終了の日 | ||
労働安全 衛生法 | 一般健康診断個人票 | 5年間 | 作成日 |
安全衛生委員会等の議事録 | 3年間 | 作成日 | |
労働保険 | 雇用保険の被保険者に関する書類 (例:雇用保険被保険者資格取得等 確認通知書(事業主通知用)) | 4年間 | 完結の日 (退職日等の日) |
その他雇用保険に関する書類 | 2年間 | 完結の日(退職日等の日) | |
労災保険に関する書類 | 3年間 | 完結の日 | |
労働保険料の徴収・納付に関する書類 (例:労働保険概算・確定保険料/ 石綿健康被害救済法一般拠出金申告書) | 3年間 | 完結の日(納付日等) | |
社会保険 | 健康保険・厚生年金保険に関する書類 (例:健康保険・厚生年金保険資格取得確認 および標準報酬決定通知書) | 3年間 | 完結の日 |
法令で定められている期間としては以上になりますが、保存スペースの問題や書類の管理が煩雑になることから、これらの保存期間が経過した後、どのくらいで破棄をするのかという目安を決め、膨大となる書類を整理しておきたいものです。