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【人事労務ニュース】 給与から控除をする際に締結が必要な労使協定

 4月に入社した新卒の従業員に多くの会社で初任給が支払われたころでしょう。会社は、給与を支払う際に、所得税や社会保険料などを控除しています。しかし、給与から一部を控除して支払うことは、会社が自由に行うことができるわけではなく、労働基準法の定めに従って行う必要があります。そして、これに違反した場合には30万円以下の罰金という罰則が設けられています。そこで今回は、給与の一部を控除する際の締結すべき労使協定について取り上げましょう。

1.給与支払の5原則と控除
 そもそも労働基準法第24条では、労働の対価である給与が完全かつ確実に従業員本人の手に渡るようにという趣旨のもとに、(1)通貨払、(2)直接払、(3)全額払、(4)毎月払、(5)一定期日払、という5つの原則を定めています。
 このうちの(3)の全額払の原則に従うと、給与は何も控除せずに全額支払わなければなりません。ただし、この原則には2つの例外があり、「法令の定めがある場合」または「労使協定がある場合」には、会社は給与からその金額の一部を控除することができます。一つめの「法令に定めがある場合」とは、所得税、社会保険料、住民税を控除することであり、二つめの「労使協定がある場合」とは、寮社宅費や団体扱いの生命保険料、組合費などを控除することです。

2.労使協定で定める内容
 二つめにあげた労使協定を締結する場合には、協定に以下の2つの項目を記載することとなっています。
 (1)控除の対象となる具体的な項目
 (2)各項目別に定める控除を行う給与支払日

 (1)でいう具体的な項目とは、控除する根拠や金額が明確なものであることが必要で、「寮社宅費」というようにその名称を記載します。また、(2)については、(1)で定めたものを控除する具体的日付を「毎月25日に支払う給与から控除する」というように記載します。
 なお、この協定の様式は任意のものでよく、有効期間についての定めはありません。また、労働基準監督署への届出義務もないため、締結した協定は、会社で保管しておくことになります。

 給与から控除するものは時間とともに変更になることもありますが、協定の内容が実態と合っていないことも見受けられます。控除するものが増えるときには、確実に協定の見直しも行うようにしましょう。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。