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【人事労務ニュース】 震災の影響で増加する在宅勤務制度とその労働時間管理

 東日本大震災に伴う計画停電の実施などを受けて、在宅勤務制度を取り入れる企業が増加しています。特に近年はインターネットやクラウドコンピューティングの普及により、在宅勤務を行いやすい環境がかなり整ってきていることから、今後はより多くの企業でこの制度の導入が検討されることになるのではないかと思われます。しかし、在宅勤務制度を実施する際にはいくつもの乗り越えなければならない課題が存在します。その中でも最大の課題は労働時間管理だと言えるでしょう。以下では在宅勤務における労働時間の考え方について解説します。

[労働時間管理の原則と例外]
  在宅勤務といえども労働時間が把握できる限りは、通常どおり労働時間を管理する必要があります。具体的には、始業時と終業時に上司に連絡を入れることをルール化して管理するケースが多く見られます。ただし、以下の3点をすべて満たす場合には例外的に事業場外みなし労働時間制を適用することが認められています。

(1)当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
(2)当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
(3)当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基いて行われていないこと

 (2)の「通信可能な状態」とは、使用者が従業員に対して電子メール、電子掲示板等により随時具体的な指示を行うことが可能であり、かつ、使用者から具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態の意味であり、例えば、単に回線が接続されているだけで労働者が情報通信機器から離れることが自由である場合などは「通信可能な状態」には当たりません。

[事業場外みなし労働時間制の注意点]
 事業場外みなし労働時間制を導入した場合は原則として、就業規則等で定められた「所定労働時間」労働したものとみなすこととなります。ただし、通常「所定労働時間」を超えて労働することが必要となる場合には、当該「通常必要とされる時間」労働したものとみなされます。なお、在宅勤務時の労働時間を事業場外みなし労働時間によって算定する場合は労働時間の実態が掴みにくくなり、場合によっては過重労働などが起こりやすい状況にあることから、事業主は従業員の労働時間の状況の適切な把握に努め、必要に応じて所定労働時間や業務内容等について改善を行うことが求められています。
 

 在宅勤務制度の導入は、今回のような災害発生時の事業継続の手段としてだけでなく、ワークライフバランスの実現にも繋がる取り組みであることから、今後、大企業を中心に制度の導入が進められると予想されます。しかし、現実には労働時間管理の問題だけでなく、業務の品質管理や組織内コミュニケーションなど様々な解決すべき課題が存在しますので、実際の導入にあたってはそれら諸問題の検証を十分に行うことが重要です。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。