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【人事労務ニュース】 精神障害による労災請求件数が3年連続で過去最高を更新

 長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかり、従業員が脳・心臓疾患や精神障害等を発症するケースが増加しています。このように働き過ぎによる健康障害の問題が深刻化する中、脳・心臓疾患あるいは精神障害等の発症に伴い、労災保険の請求が行われるケースも増加しています。先日、この請求状況に関する平成23年度の調査結果が厚生労働省より発表されました。以下ではこの結果について見ていくことにしましょう。

1.脳・心臓疾患の労災補償状況
 脳・心臓疾患の請求件数は前年の802件から96件増加して898件となり、2年連続して増加しています。また支給決定件数については285件から25件増加して310件となり、こちらは4年ぶりに増加に転じ、依然として高水準で推移しています。請求件数、支給決定件数ともに多い業種をみていくと、運輸業、郵便業、卸売・小売業、製造業が挙げられており、年齢別としては40代、50代において支給決定件数が多くなっています。

2.精神障害等の労災補償状況
 精神障害等の請求件数は増加傾向にあり、平成23年度は前年の1,181件から91件増加して1,272件となりました。また、支給決定件数についても、前年の308件から17件増加して325件となり、請求件数、支給決定件数ともに過去最高を更新しています。請求件数、支給決定件数ともに多い業種をみていくと、製造業、卸売・小売業、医業・福祉が挙げられており、年齢別としては30代、40代において支給決定件数が多くなっています。

 精神障害等の労災認定は平成23年12月26日に新通達(「心理的負荷による精神障害の認定基準について」)が出され、心理的負荷評価表がわかりやすくなり、実際の認定はこの評価表に基づいて判断されることになっています。今回の調査結果においては旧・新通達での判断が混在しており、新通達の影響がどの程度あったかは不明です。
 なお、支給決定件数325件を具体的な出来事別に分類すると上位項目は次のとおりとなっており、職場におけるこのような事象には特に気を配る必要があります。
(1)仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった(52件)
(2)悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(48件)
(3)(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた(40件)

 心理的負荷を与える要因として仕事の身体的・心理的な負担だけでなく、職場内での人間関係も影響を及ぼしていることが読み取れます。企業としては過重労働の防止と併せて、就業規則の服務規律等でハラスメントを禁止する旨の内容を定めたり管理職を中心とした社内研修を実施したりするなど、具体的な対策が求められています。

■参考リンク
厚生労働省「平成23年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002coxc.html

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。