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【人事労務ニュース】 増加する精神障害による労災請求件数

 長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかり、従業員が脳・心臓疾患や精神障害等を発症するケースが増加しています。このように働き過ぎによる健康障害の問題が深刻化する中、脳・心臓疾患あるいは精神障害等の発症に伴い、労災保険の請求が行われるケースも増加しています。この請求状況に関する平成22年度の調査結果が、先月、厚生労働省より発表されました。以下ではこの結果について見ていくことにしましょう。

1.脳・心臓疾患の労災補償状況
 脳・心臓疾患の請求件数は前年の767件から35件増加して802件となり、4年ぶりに増加に転じています。また支給決定件数については293件から8件減少して285件となり、こちらは3年連続して減少となりましたが、依然として高水準で推移しています。脳・心臓疾患の支給決定件数の多い業種をみていくと、運輸業、郵便業、卸売・小売業、製造業が挙げられており、年齢別としては40代、50代において支給決定件数が多くなっています。

2.精神障害等の労災補償状況
 精神障害等の請求件数は増加傾向にあり、平成22年度は前年の1,136件から45件増加して1,181件となりました。これは精神障害等についても労災保険の対象として認められるケースがあることが、労使の間で認識されつつある結果ではないかと考えられます。また、支給決定件数についても、前年の234件から74件増加して308件となり、過去最高となりました。精神障害等の請求件数、支給決定件数ともに多い業種として、製造業、卸売・小売業、医業・福祉が挙げられており、年齢別としては30代、40代において支給決定件数が多くなっています。


 精神障害等の労災認定は、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」の別表1「職場における心理的負荷評価表」に基づいて判断されていますが、今回の調査結果において支給決定件数308件を具体的出来事別に分類すると、上位項目に「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」、「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が挙げられています。
  このことから、仕事の身体的・心理的な負担だけでなく、職場内での人間関係による心理的負荷の存在が読み取ることができ、企業としては、相談窓口を設置したり、就業規則の服務規律にパワーハラスメントを禁止する旨の条項を追加するなど、具体的な対策が求められます。



■参考リンク
厚生労働省「平成22年度 脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況まとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001f1k7.html 


※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。