【人事労務ニュース】 パートタイマーを正社員に登用する際に活用できる均衡待遇・正社員化推進奨励金
近年、多くの企業でパートタイマーや契約社員など、いわゆる非正規労働者の活用が進んでおり、総務省の労働力調査(平成23年2月21日公表)によると平成22年平均で非正規労働者の割合は34.3%(前年比0.6ポイント増)と、全労働者の3分の1が非正規労働者という状況になっています。
このように非正規労働者の雇用が進む一方で、その不安定な雇用状況は問題視されており、国としても雇用安定を図るという方針を打ち出しています。その具体的な支援のひとつとしてパートタイマーや契約社員を正社員へ転換した際に助成金を支給する制度が設けられています。このような趣旨の助成金は以前からも設けられていましたが、この4月に助成金の統廃合が行われ、「均衡待遇・正社員化推進奨励金」という助成金に見直しが図られました。以下では、この制度の概要について取り上げてみることとします。
[均衡待遇・正社員化推進奨励金の概要]
この奨励金は5つの制度(正社員転換制度、共通処遇制度、共通教育訓練制度、短時間正社員制度、健康診断制度)から構成されています。
1.正社員転換制度
パートタイマーを正社員に転換する制度を導入し、制度導入後2年以内に実際に転換を実施したときに支給されるもので、以下の2つ((1)制度導入分、(2)転換促進分)から構成されています。※対象労働者10人目まで
(1)制度導入分
対象労働者1人目:中小企業(*1)の場合40万円(大企業の場合30万円)
(2)転換促進分
対象労働者2人目から10人目:対象者1人について中小企業の場合20万円(大企業の場合15万円)
※母子家庭の母等については中小企業の場合30万円(大企業の場合25万円)
2.共通処遇制度
新たに正社員と共通の処遇制度(※職務または職能の評価・資格制度に基づくものであること)を導入し、パートタイマーに対して実際に適用した場合:中小企業の場合60万円(大企業の場合50万円)
3.共通教育訓練制度
正社員と共通のカリキュラム内容と時間による教育訓練制度を導入し、制度導入後2年以内に中小企業は延べ10人(大企業は延べ30人)に対して6時間以上の研修(Off-JTに限定)を受講させた場合:中小企業の場合40万円(大企業の場合30万円)
4.短時間正社員制度
短時間正社員制度を設け、制度導入後5年以内に実際に利用者が出た場合に支給されるもので、以下の2つ((1)制度導入分、(2)定着促進分)から構成されています。※対象労働者10人目まで
(1)制度導入分
対象労働者1人目:中小規模事業主(*2)の場合40万円(大規模事業主の場合30万円)
(2)定着促進分
対象労働者2人目から10人目:対象者1人について中小規模事業主の場合20万円(大規模事業主の場合15万円)
※母子家庭の母等については中小規模事業主の場合30万円(大規模事業主の場合25万円)
5.健康診断制度
パートタイマーに対する健康診断制度を導入し、制度導入後2年以内に延べ4人以上に健康診断を実施した場合:中小企業の場合40万円(大企業の場合30万円)
中小企業のみを対象とする助成金が多い中で、この助成金は大企業も対象となっています。また、助成金の内容を見てみると正社員への転換や健康診断の実施など、企業において利用しやすいメニューから構成されていますので、企業としては、このような助成金を活用しながらパートタイマーの雇用環境を改善していきたいものです。この助成金の詳細の問い合わせ先は、都道府県労働局雇用均等室となっています。
*1 中小企業とは、以下の(1)(2)の要件の両方またはどちらか一方を満たす企業をいいます。
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*2 中小規模事業主とは、常時雇用する労働者の数が300人を超えない事業主をいいます。中小規模事業主以外は大規模事業主になります。
■参考リンク
厚生労働省「均衡待遇・正社員化推進奨励金支給申請のご案内(リーフレット)」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/dl/110411_1.pdf