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【人事労務ニュース】 雇用保険の加入要件と同居親族等の取り扱い

 社会保険は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労働者災害補償保険など、その給付目的により複数に分かれており、加入要件が異なっています。それぞれの加入要件は年齢、労働時間などにより決定されますが、この中でも雇用保険は、実務上の判断が難しいとされています。これらの判断を誤ると、実際に失業した際に雇用保険の給付が受けられないという事態を招くことがあるため、今回は雇用保険の基本的な加入要件を確認した上で、ポイントとなる判断基準について理解しておきましょう。

1.雇用保険の被保険者の基本的要件
 雇用保険の被保険者となるのは、以下の4つの要件をすべて満たす従業員であり、これらの要件を満たせば国籍は関係なく、外国人も被保険者になります

(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
 雇用保険の加入要件のもっとも基本的な判断基準が労働時間であり、1週間の所定労働時間が週20時間以上の従業員については被保険者になります。

(2)継続して31日以上雇用されることが見込まれること
 正社員のように期間の定めのない雇用契約はもちろん、期間の定めのある場合でも、その期間が31日以上である場合には加入することになります。なお、雇用契約の期間が31日未満の場合でも、契約更新を行うことで31日以上雇用される見込みがある場合には、最初の雇用契約から被保険者になります。

(3)入社時点で65歳未満であること
 65歳以上であっても雇用保険の被保険者資格を継続することはできますが、65歳到達日(65歳の誕生日の前日)以降に入社した従業員は、その他の要件を満たしていても被保険者にはなりません。

(4)会社の役員、事業主の同居の親族、昼間学生でないこと
 そもそも雇用保険は、事業所に雇用される従業員が失業その他雇用の継続が困難になった場合の保障を主な目的とした制度であるため、事業主や事業主と同居の親族、役員など労働者の身分を持たない人は被保険者になれません。また、昼間学生アルバイトは、労働者であっても雇用保険の被保険者にはならないとされています。

2.例外的に被保険者となる人の要件
 1.の(4)の会社の役員等は、原則被保険者となりませんが、役員の身分を持つと同時に従業員の身分を持つことがあります。このような場合には被保険者になることがありますので、その判断基準をここで確認しておきます。


(1)会社の役員が被保険者となる場合
 役員のうち一部の人は、工場長や部長など、従業員の身分を兼ねている場合もあります。この場合、その人の業務内容や給与支払状況などの実態を個別に確認し、従業員的性格が強いと認められれば、被保険者となります。この判断は、ハローワークが事業所から提出される所定の書面と確認資料により行います。なお、代表者については被保険者と認められることはありません。

(2)事業主と同居する親族が被保険者となる場合
 中小企業では事業主の家族を中心に経営することがありますが、一般の従業員と一緒に働く場合において、業務上の指揮命令、出勤や退勤など就業管理の実態や給与の支払基準などが一般の従業員と同様に扱われているときには、雇用関係があると認められ、被保険者となる場合があります。この判断は、出勤簿や賃金台帳などを確認して行われます。

(3)昼間学生アルバイト
 昼間学生アルバイトは、原則として被保険者にはなりませんが、休学中の人や卒業後就職予定の事業所へ在学中から就職し、卒業見込証明書を提出することができる人は、被保険者となります。また、会社の命令で雇用関係を存続したまま大学院などに通う従業員も、同様に被保険者資格を継続することになります。

 この他、近年増加している在宅勤務者についても判断に迷うことがありますが、指揮命令や勤務管理、労働条件などが他の従業員と同様な扱いの場合は、被保険者となります。被保険者になるか否かの判断は、実態を確認されることもあるので、曖昧な場合はその都度管轄のハローワークへ確認するなどして、適正な資格取得手続きを行いましょう。
 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。