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【人事労務ニュース】 重要性が増す過重労働対策と労働時間管理

 近年の労務管理における最重要事項の一つが過重労働対策です。そこで以下では、過重労働対策として注意したい時間外労働時間数と労働時間を把握する際の留意点をとり上げましょう。

1.注意したい時間外労働時間数
 先月、厚生労働省より発表された平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」のまとめによると、脳・心臓疾患が労災として認められた338件の時間外労働時間数は以下のようになっています。

脳・心臓疾患の時間外労働時間数(1ヶ月平均)別支給決定件数

 
支給決定件数
うち死亡
45時間未満
0
0
45時間以上〜60時間未満
0
0
60時間以上〜80時間未満
20
4
80時間以上〜100時間未満
116
50
100時間以上〜120時間未満
69
28
120時間以上〜140時間未満
50
14
140時間以上〜160時間未満
16
9
160時間以上
31
9
その他
36
9
合計
338
123

 注目すべきは時間外労働時間数がすべて60時間以上となっていることであり、60時間以上の時間外労働は過重労働と判断される可能性が高くなっていることがわかります。いわゆる過労死認定基準では、1ヶ月当たり80時間という数字が業務と発症との関連性が強い水準として明示されていますが、実務上は1ヶ月当たり60時間を超える時間外労働がないように労働時間を管理することが求められます。併せて、サービス残業等が発生していないか、実際の時間外労働時間数が何時間となっているのかを適正に把握することが重要となります。

2.労働時間を把握する際の留意点

(1)労働時間の原則的な把握方法
 多くの企業では、出勤簿に押印することやタイムカードに打刻することで、出勤の有無や労働時間を把握していますが、厚生労働省が出している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(以下、「通達」という)では、始業・終業時刻の確認および記録の原則的な方法を以下のいずれかと定めています。

(a)使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
(b)タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

 (a)の自ら現認するという意味は、事業主や労働時間管理を担当する者が、直接、始業時刻や終業時刻を確認することであり、現実的にはすべての就業日について現認することは困難なケースが多いでしょう。したがって、(b)のようにタイムカードなどで記録をすることが原則的な取扱いとなります。

(2)自己申告制により労働時間管理を行う際の留意点 
 上記の方法によらず、従業員自身の申告に基づかざるを得ないケースも考えられます。このように自己申告制をとる場合には、曖昧な労働時間管理になることを防ぐため、以下の措置を講ずることが求められています。

(a)自己申告制を導入する前に、その対象となる従業員に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うなどについて十分な説明を行うこと。
(b)自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて調査を実施すること。
(c)従業員の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定する等をしないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等の措置が、従業員の適正な申告を阻害する要因となっていないかを確認するとともに、必要に応じて改善すること。

 自己申告制による労働時間管理も認められていますが、企業としてはできるだけ客観的な労働時間把握ができるタイムカードの導入を行い、管理を進めていきたいところです。そして、36協定の限度時間を超えていたり、1ヶ月当たりの時間外労働時間数が60時間を超えている従業員がいないか、いる場合は慢性的な長時間労働となっていないかについてもチェックし、その要因を確認した上で、部内で業務分担を見直すなどして対策を打っていくことが求められます。

■参考リンク
厚生労働省「平成25年度地方労働行政運営方針の策定について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000321hg.html

厚生労働省「平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034xn0.html

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/070614-2.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。