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【人事労務ニュース】 社会保険の算定基礎の概要と注意したい例外的な取扱い

 健康保険および厚生年金保険の保険料は、支払われる報酬を標準報酬月額表にあてはめて決定することになっており、原則として1年に1度、毎年7月に全被保険者の標準報酬月額が見直されます。これを定時決定(算定基礎)と呼んでおり、平成24年については、7月2日(月)から7月10日(火)に算定基礎届を年金事務所へ提出することとなっています。今回はこの算定基礎の概要と注意したい例外的な取り扱いについて取り上げましょう。

1.算定基礎のルール
 算定基礎届には、その年の4月・5月・6月に支払われた報酬の額を記入することになっており、これらの平均額に基づき、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額、そして保険料を決定します。なお、各月について、報酬の支払対象となる日数(支払基礎日数)を記入することになっており、平均額を計算する際には、17日未満の月は除くことになっています。この支払基礎日数には、以下のようなルールが決められていることから、注意が必要です。


(1)月給者は暦日数、日給者および時給者は出勤日数を記入する。
(2)月給者が欠勤により給与が控除される場合は、就業規則・給与規程等に基づき事業所が定めた日数か ら欠勤日数を控除した日数とする。
(3)短時間就労者(いわゆるパートタイマー)であって、4月・5月・6月のすべての支払基礎日数が17日未満の場合には、15日以上の月に支払われた報酬の額を平均して標準報酬月額を決定する。

2.算定基礎の対象者
 算定基礎は、原則として7月1日現在の全被保険者を対象として行いますが、以下の被保険者については届出を行う必要はありません。


(1)6月1日以降に新たに資格取得した被保険者
(2)6月30日以前に退職した被保険者
(3)7月に随時改定(月額変更)を行う被保険者

3.算定基礎の例外的な取扱い
 算定基礎の原則は以上のとおりですが、4月・5月・6月に支払われた払われた報酬の額を平均し、標準報酬月額を決定することが著しく不当であると認められる場合には、保険者である日本年金機構が標準報酬月額を決定する「保険者算定」というものがあります。この取り扱いには、現在以下の5つがあります。


(1)報酬が遡及して払われた場合
 4月・5月・6月において、3月以前に支払われるべき報酬が含まれている場合には、その額を除いて計算することとなります。

(2)被保険者が休職中である場合
 被保険者が休職中で、4月・5月・6月のいずれかの月において報酬が支払われない場合、もしくは支払われる報酬が低額の場合には、その月を除いて計算することとなります。

(3)ストライキによる報酬カットがあった場合
 ストライキにより、4月・5月・6月のいずれかの月において報酬が支払われない場合、もしくは一部がカットされた場合には、?と同様にその月を除いて計算することとなります。

(4)4月・5月・6月と年間の業務の繁閑差が著しい場合
 4月・5月・6月と1年間の業務を比較し、業務の性質上、繁閑差が著しくある場合には、前年7月から当年6月までの報酬の額の平均で計算することとなります。この繁閑差が著しいとは、4月・5月・6月の報酬額の平均が、前年7月から当年6月までの報酬額の平均と比べ、2等級以上差がある場合を指します。ただし、2等級以上差が生じる理由が業務の性質上例年発生することが見込まれるものであること、また1年間の報酬平均で定時決定を行うことの申出書、被保険者の同意書等を添付する必要があります。

(5)報酬の支払対象期間の途中に資格取得した場合
 4月・5月・6月の報酬の支払対象期間の途中に資格取得をしたため、資格取得をした月の報酬が1ヶ月分支払われない場合には、その月を除いて計算することとなります。

 算定基礎届を提出した後は、日本年金機構から標準報酬月額の決定または改定通知書が送付されます。この通知書を受け取った場合には、給与から控除する保険料の額を変更するとともに、被保険者にも通知する必要があります。期限までに作成の上、届出を行いましょう。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。