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【人事労務ニュース】 産前産後休暇の期間と禁止事項

 日本は諸外国と比較して、結婚や出産を機に退職する女性が多いと言われていますが、近年は産前産後休暇や育児休業を取得した後に復帰する女性が増加傾向にあります。そこで、今回は産前産後休暇の基本的な内容を押さえ、更には2年以内に始まる社会保険料の免除の内容について取り上げることにしましょう。
 

1.産前産後休暇とは
 産前産後休暇とは、出産日を基準に、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間の休暇が取得できるというものです。この休暇は母性保護のための休暇として労働基準法で定められているものであり、産前休暇については労働者からの申し出があった場合に、産後休暇については申し出に拘らず必ず休暇を与えなければなりません。ただし、産後6週間経過した場合には、労働者の同意を得た上で、医師が支障ないと認めた業務に限り、労働させることが認められています。


 産前休暇のカウント方法としては、出産予定日から遡って数えることになっており、実出産日は産前休暇に含まれることになっています。そして、産後休暇は実出産日の翌日から数えることになります。このため、出産予定日より実出産日が遅れた場合には、その間は産前休暇に含まれることになります。


 ちなみに、労働基準法における出産とは、妊娠85日以上の分娩のことを指すため、流産や人工妊娠中絶であっても妊娠85日以上であれば産後休暇の対象となります。
 

2.産前産後休暇の申し出または休暇を取得した労働者に対しての禁止事項
 産前産後休暇については母性保護のために認められる当然の休暇であるため、申し出や取得をしたことによって解雇、その他不利益な取扱いをすることは禁止されています。具体的な不利益な取扱いとは、以下のようなことを指すとされています。

  • 有期労働契約者について、契約の更新をしないこと
  • あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
  • 退職または正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
  • 降格すること
  • 減給をし、または賞与等において不利益な算定を行うこと
  • 昇進、昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
 なお、これらの取扱いは、育児休業についても同様となっております。

 

3.今後適用されることが決まっている産前産後休暇中の社会保険料免除
 現在、社会保険料の取り扱いについては、育児休業期間中は労使ともに申出により免除されていますが、産前産後休暇中は免除の対象となっていません。この取り扱いについては、健康保険法および厚生年金保険法が改正され、今後、免除となることが決定しています。具体的な施行日は決定していませんが、今後2年以内で政令で定める日からとされています。


 産前産後休暇中の賃金は、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、無給としている企業が多いため、産前産後休暇中に発生する社会保険料を別途徴収する手間がかかっていました。この法改正により、労使双方の負担と手間が減ることになります。なお、ここで免除されている期間についても被保険者資格は継続し、健康保険証はそれまでと同様に利用でき、将来の年金計算においても年金保険料を納付したこととして取り扱われるため、労働者の不利益にはならないことになっています。

 産前産後休暇の基本的内容を押さえ、誤った取扱いをしないように留意しましょう。
 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。