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【人事労務ニュース】 採用リスクを軽減する試用期間の設定とその運用ポイント

 新年度を迎え、4月1日に入社式を開催された企業も多いのではないでしょうか。選考試験を経て入社してきた新入社員ですが、実際に業務に就いてみると期待していた人材とは違ったということが少なくありません。そのため、企業のリスク管理としては入社後の一定期間について、技能、能力、勤務態度等を判断する期間として試用期間を設け、その中で本採用とするか確認しておくことが重要となります。そこで、今回はこの試用期間の設定における留意点と運用のポイントについてとり上げましょう。

1.試用期間の法的な位置づけ
 試用期間中に従業員を本採用せずに解雇することは、長らく働いている通常の従業員を解雇することに比べ、広く認められると考えられています。ただし、解雇の理由については、合理的なものでなければなりません。そのため試用期間中であっても解雇を行うためには、能力面や行動面などの不足する部分を具体的に示した上で、十分な教育や指導を行い、能力の向上や勤務態度の改善を目指す必要があります。また、雇用期間が14日を超えて解雇を行う場合には、試用期間中であっても解雇予告が必要となります。
※新卒社員については、そもそも即戦力としての採用ではないことから、中途入社の社員と比較し、企業による教育の必要性が強く求められることから、試用期間による本採用拒否は現実的に難しいとご理解ください。

2.試用期間の長さ
 試用期間の長さは一般的に3ヶ月から6ヶ月程度で定められていることが多くありますが、長さについて法律上の規定はありません。しかし、試用期間中の従業員の身分は不安定なものとなるため、極端に長い期間を設定した場合には裁判等において無効とされる危険性があります。業種や職種にもよりますが、トータルで1年を超えるようなものは認められないと考える必要があります。

3.試用期間の延長
 勤怠不良等の理由で、入社当初に設定した試用期間では、本採用の可否が判断できないこともあり得ます。このような場合には、一つの選択肢として、試用期間を延長することが考えられます。またその際、対象となる従業員に延長をする旨とその延長する期間を伝えると共に、会社が期待する業務水準を明確にしておくことがポイントになります。また、実際の試用期間の運用においては、知らないうちに試用期間が経過していたということもあるため、試用期間が終了する前に直属の上司から従業員の勤務態度等を確認するといった対応が求められます。 

4.就業規則へ規定すべき事項
 以上のように試用期間の設定と運用には多くの留意点がありますが、この前提として試用期間に関する事項を就業規則に規定しておく必要があります。その事項は、前述したことも含めると以下のようなものになります。

(1)試用期間の目的
(2)試用期間の長さ
(3)試用期間中の賃金やその他の労働条件
(4)本採用しない場合の基準
(5)試用期間の延長に関する事項
(6)勤続年数の算定にかかる試用期間の取扱い

 まずは就業規則にこれらの事項が定められていることを確認するとともに、採用時には試用期間がある旨を従業員に説明しておくことが必要になるでしょう。

 より自社に適した人材を採用し、よりよい組織風土を築いていくためには、採用時に人材を見極めるようにする一方で、試用期間を利用し採用時には判断ができなかった点についても確認しておくべきでしょう。そして就業規則を整備するとともに、運用についても再度、チェックしておくことが求められます。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。