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【人事労務ニュース】 就業規則の重要性と労働基準監督署への届出義務

 企業の人事労務管理の状況を見ていると、ここ数年、従業員と会社の間における個別労働紛争が増加していることを実感します。これは各種の統計を見ても明らかですが、その理由としては労働者の権利意識の高まりやインターネットを通じ労働法に関する情報が手軽に入手できるようになったことなどが挙げられます。確かにこれらの理由が労働紛争の増加の一因になっていることは間違いありませんが、その一方で会社側の人事労務管理の不備がその問題を大きくしてしまっていることも否定できません。特に労働契約法が平成20年3月に施行されて以来、会社のルールをまとめた就業規則の重要性は高まる一方です。そこで今回は、就業規則の位置づけとその届出義務について確認しておきましょう。 

1.労働契約と就業規則の関係
 そもそも労働契約は、労働者が労務を提供し、使用者が賃金を払うことに合意することで成立します。この労働契約の締結の際、労働時間や就業場所といった個別の労働条件を決定することとなります。原則は、労働条件のすべてを個別に決定する必要がありますが、事業場に就業規則がある場合で、その就業規則が合理的な内容であり、労働者がいつでも見ることのできる状態になっているときには、その就業規則が労働条件になるとされています。ただし、労働者と使用者が就業規則と異なる内容を個別の労働条件として決めており合意していた場合には、その合意した内容が就業規則よりも優先されることとなります。(労働契約法第7条)
 以上のように個別の労働契約においてすべての労働条件を合意することは現実的ではなく、すべての労働者の労働条件を画一的に取り扱うためには、就業規則の整備は非常に重要な意味を持つのです。なお、労働者と使用者で個別に合意した労働条件であっても、その内容が就業規則を下回るときは、就業規則の内容まで引き上げられることになっているため、個別で合意する内容には十分な確認が求められます。(労働契約法第12条)

2.就業規則の作成と届出義務
 就業規則の作成および届出義務は、労働基準法第89条で規定されています。その内容は、常時10人以上の労働者がいる事業場については作成をし、労働者の過半数代表の意見を聞いた上で、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。この届出は企業単位ではなく、事業場単位(支店・営業所・工場など)で考え、複数の事業場がある企業では「本社で届出をしているため、支店での提出は不要」というような勘違いをしているケースが見受けられるため、注意しましょう。

 就業規則は一度作成すれば完璧というものではなく、法改正や社会環境の変化に応じてメンテナンスをしておく必要があります。来年4月に新入社員が入社する企業も多いでしょう。それまでに近時の法改正の内容を満たしているか、自社の実態に適合したものになっているかを確認し、整備しておくことが望まれます。就業規則の見直しを検討されている場合には、当事務所にご相談ください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。