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【人事労務ニュース】 就業規則の作成・届出が必要となる「常時10人以上の労働者」を使用する事業場とは

 平成25年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、就業規則の見直しを行われた企業も多いかと思います。労働基準法において「常時10人以上の労働者」を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届出をしなければならないとされています(労働基準法第89条)が、ここでよく問題になるのが、この「10人」をどのようにカウントし、判断するかということです。そこで今回は常時10人以上という労働者数に含めなければならない労働者の範囲について解説します。

1.「常時10人以上の労働者を使用する」とは
 「常時10人以上の労働者を使用する」とは、一時的に10人未満になることがあったとしても、常態として10人以上の労働者を使用していることを意味しています。したがって、通常時は8人の労働者を使用するに止まり、繁忙期において2人から3人を臨時的に雇用する場合は含まれません。

2.「常時10人以上」の判断を行う単位
 「常時10人以上」の判断を行う単位は、企業全体ではなく、事業場単位となります。そのため、例えば社員数5人のA工場と8人のB工場という2つの工場から会社が構成されている場合は、この工場がそれぞれ独立した事業場と考えられるのであれば、いずれも常時10人以上の労働者を使用するとはならないため、就業規則の作成義務はないということになります。

3.様々な雇用形態の取り扱い
 会社には正社員だけではなく、パートタイマーや出向社員など様々な労働者がいます。これらの者が「常時10人以上の労働者」に含まれるのか否か、対象範囲を整理しておきます。

(1)パートタイマー
 労働基準法では、パートタイマーや嘱託社員といった雇用区分を問わず、事業または事務所に使用され賃金を支払われる者を「労働者」としているため、パートタイマーのように正社員以外の雇用区分の者であっても「労働者」として人数のカウントに入ることとなります。
(2)出向社員
 出向については、在籍出向と転籍出向に分けて考える必要があります。
a.在籍出向
 在籍出向の場合、出向元および出向先の双方が労働者との間に二重の労働契約が成立するとされています。そのため常用労働者数のカウントにおいては、出向元・出向先ともに労働者数に含める必要があります。 
b.転籍(移籍出向)
 転籍とは、出向元の会社を退職し、出向先の会社に改めて雇用されること(労働者と出向先との間のみに労働契約の関係が存在)を指しています。よって、出向先の会社のみで労働者数に含めることになります。
(3)派遣社員
 派遣社員については、派遣元との間に労働契約の関係が存在します。よって派遣元の会社においてのみ労働者数に含めることになります。

 以上のような基準により、常時10人以上の労働者を使用する事業場か否かを判断し、10人以上に当てはまる場合には、就業規則の作成と所轄労働基準監督署への届出を行わなければなりません。一方、10人未満の事業場においては労働基準法上、就業規則の作成義務はありませんが、そもそも就業規則はその会社で働くためのルールを定めたものであり、労使トラブルを防ぎ、万が一発生した際の切り札になることを踏まえると、作成義務のない小規模事業であっても作成しておくことが望ましいのは間違いありません。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。