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【人事労務ニュース】 事業所を新設した場合に求められる労働保険手続と労災保険料率

 従業員が働く上で関わる社会保険にはいくつかの制度がありますが、その中のひとつに労働保険があります。労働保険は、主に従業員が業務上の災害や通勤による災害を受けた場合に必要な保険給付を行う労働者災害補償保険(労災保険)と、従業員が失業した場合、失業給付金等を支払う雇用保険に分かれていますが、今回は労働保険に関する諸手続きのうち、新たに工場や営業所などの事業所を設けた場合に必要な手続きについて取り上げましょう。 

1.労働保険の事業の単位
 労働保険の成立は「事業」を単位として適用します。この適用単位の「事業」とは、工場、商店、事務所、本社、支店、営業所、建設工事現場など、一定の場所で一定の組織のもとに、有機的に相関して行われる一体的な経営活動をいうとされています。したがって、新たに工場や営業所などを設置する場合には、それらに独立性があるか否かで一つの「事業」と判断されるかが決定します。この独立性の判断については、以下の3つの要件により行われます。

(1)場所的に他の事業場から独立していること
(2)組織的に一つの単位体をなし、経理、人事、経営(業務)上の指揮監督、作業工程において独立性があること
(3)施設として相当期間継続性を有すること

 これらの要件すべてに該当する場合には、独立した事業場として労働保険成立の手続きを行う必要があります。なお、場所的に独立している出張所、事務所などあっても、従業員が少なく、組織的に直近の事業所の事業に対して独立性のないものについては、直近上位の事業に包括して全体を一の事業として取り扱うこととされており、新たに労働保険成立の手続きは不要とされています。

2.労災保険料率
 労働保険のうち、労災保険は業種により細かな区分がされており、労災保険率表により、その保険料率が定められています。上記1.のとおり、労働保険は独立性の有無により事業場とするか否かが判断されますが、独立した事業場と判断された場合には、その事業場の業種により適用する保険料率を判断することとなります。例えば、建設業を行っている企業が経営の多角化として福祉事業に参入し、別の場所に福祉施設をオープンさせるような場合には、もともとの事業所は建設業のままとし、オープンした福祉施設を「その他の各種事業」として業種を特定した上で、労働保険を成立させることとなります。なお、雇用保険についても業種により保険料率が分かれていますが「一般の事業」、「農林水産清酒製造の事業」、「建設の事業」の3分類のみとなっています。

 新たに工場や営業所を出したときの労働保険の手続きは漏れやすい項目となるため、必ず事業の独立性があるかの判断を行い、手続きを忘れないようにしましょう。

■参考リンク
厚生労働省「労働保険の成立手続」
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/daijin/hoken/980916_2.htm

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。