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【人事労務ニュース】 パートタイマーへの年次有給休暇付与時の注意

 10月になると、4月に入社した新入社員の勤続年数が6ヶ月になり、法律通りに付与日数を決めている企業では、年次有給休暇(以下、「年休」という)が初めて付与されるタイミングとなります。年休に関しては、様々な質問を受けますが、近年は特にパートタイマーの取扱いについてのご相談が多くなっています。そこで今回は、パートタイマーの年休に関する実務上の問題についてとり上げましょう。

1.年休の付与日数
そもそもパートタイマーの年休の付与日数は1週の所定労働日数等によって異なり、以下のとおりとなります。
【表1】1週の所定労働時間が30時間以上、1週の所定労働日数が5日以上、または年間の所定労働日数が 217日以上の者(いわゆる正社員と同様の日数を付与)

 
勤続年数
6ヵ月
1年
6ヵ月
2年
6ヵ月
3年
6ヵ月
4年
6ヵ月
5年
6ヵ月
6年
6ヵ月以上
付与日数
10日
11日
12日
14日
16日
18日
20日

【表2】1週の所定労働時間が30時間未満で、かつ、1週の所定労働日数が4日以下、または年間の所定労働日数が216日以下の者 

 
週所定
労働日数
1年間の
所定労働日数
勤続年数
6ヵ月
1年
6ヵ月
2年
6ヵ月
3年
6ヵ月
4年
6ヵ月
5年
6ヵ月
6年
6ヵ月以上
付与日数
 
 
 
4日
169〜216日
7日
8日
9日
10日
12日
13日
15日
3日
121〜168日
5日
6日
6日
8日
9日
10日
11日
2日
73〜120日
3日
4日
4日
5日
6日
6日
7日
1日
48〜72日
1日
2日
2日
2日
3日
3日
3日

 実務上、問題となるのが年度の途中で1週の所定労働日数を変更した場合の年休の取扱いです。例えば年の途中で週2日から週4日の勤務に雇用契約の内容を変更するようなケースですが、年休は付与するその基準日時点の雇用契約に基づき付与日数を決定することになります。つまり、年休を付与する基準日に週2日の勤務であった場合には、その後に週4日の契約に変更になったとしても、表2の週所定労働日数2日の欄にある日数の年休が付与されることとなります。

2.パートタイマーが年休を取得した際に支払う賃金額
 次に、年休を取得した際に支払う賃金については、以下の3つのいずれかとされており、この取扱いについてはパートタイマーも同様となっています。
 (1)平均賃金
 (2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
 (3)健康保険法の標準報酬日額に相当する金額

 これら3つのうち、いずれにするかはあらかじめ就業規則に定めておく必要があり(労働基準法第39条第6項)、(3)とする場合には労働者の過半数で組織する労働組合、組合がない場合は労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結することになっています。実際には、(2)で支払う企業も多いようですが、1日の所定労働時間が曜日等で異なる場合には、同じ年休1日を取得した際に支払われる賃金が異なることになり、所定労働時間が長い日に年休を取得したほうが得をするといったことが発生します。

 このような勤務を行うパートタイマーが存在する場合については、(1)の平均賃金に基づき手当を支給することが考えられます。これにより、いつ年休を取得したとしても公平な取扱いが可能となります。ただし、平均賃金とした場合、毎回、平均賃金を計算する必要があり、事務的に煩雑となることに注意が必要でしょう。

 年休を新たに付与したり、繰り越し日数を計算するタイミングは、年休の取扱いについて疑問が発生しやすいのではないかと思います。ご不明点がありましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。