【人事労務ニュース】 誤解しやすい通勤災害の範囲
労災保険では業務中に事故に遭い、ケガ等をした場合に治療費等が給付されますが、通勤の途中で事故に遭いケガ等をした場合にも、通勤災害として給付を受けることができます。この通勤災害についてはその取扱いを誤解しているケースが少なからず見られることから、今回は問題となりやすい2つのケースについて解説します。
1.勤務先に届け出ている経路と違う方法で通勤した場合の取り扱い
通勤に関しては、自宅から勤務先までの経路を事前に会社に届出し、その経路に基づき通勤手当を支払っている会社が多いのではないかと思いますが、実際には届出されている経路以外で通勤することもあります。その場合に労災の給付を受けることができるかということがよく問題になりますが、労災保険では会社に届出された以外の経路で通勤した場合についても、その方法と経路が合理的と認められるのであれば給付を受けることができます。例えば、自動車通勤の際に、会社に届け出た経路が渋滞していたため、違う経路を通って通勤したという場合、大きく回り道をするような経路でない限りは合理的な経路と認められます。また、通常は自転車で通勤している経路を、雨の日のみ最寄りのバス停からバスに乗って通勤するような場合は合理的な方法と判断されるでしょう。ただし、健康のために何十キロもある道のりを自転車で通勤するような場合には、合理的な方法とは判断されない可能性が出てきます。
2.複数の勤務先の移動で事故に遭いケガ等をした場合の取り扱い
近年、パートタイマーなどの非正規従業員が増加したことから、兼業を行い、複数の会社で勤務するという例が増えています。通勤災害における通勤の基本的な考え方は、自宅と勤務先の間の移動ですが、複数の会社で勤務する者が、前の勤務先から次の勤務先に移動する場合も通勤として取り扱い、この途中で事故に遭いケガ等をした場合でも労災保険から給付が受けられることになっています。なお、この場合には、次の勤務先へ移動する途中に事故に遭ったと取り扱われるため、2つ目の会社の労災保険を利用することになります。
以上のように、通勤災害は単純に自宅と会社の通勤のみを対象としたものではありません。従業員には対象になるケースとならないケースがあることを説明し、万が一、事故に遭った場合には適切な手続きができるようにしておきましょう。