【人事労務ニュース】 混同されやすい労働者派遣と請負契約
2012年4月6日に改正労働者派遣法が公布され、違法派遣の際の労働契約申込みみなし制度などが導入されることとなりました。そのため、派遣労働者を採用している企業においては、その対応が今後必要になってきますが、その際、労働者派遣(以下、「派遣」という)を業務請負(以下、「請負」という)に切り替えることができないかという検討がなされることが多く見受けられます。しかし、派遣と請負には大きな違いがあり、単純に切り替えられるものではありません。今回は、派遣と請負を適切に運用するために、その違いを押さえておきましょう。
1.派遣と請負の明確な相違点
派遣とは、図1のように派遣元事業主が自社の従業員を派遣先企業となる他社へ派遣し、派遣先の指揮命令を受けてこの派遣先のために働かせる形態をいいます。一方、請負とは図2のように注文主から受ける仕事の完成を目的とする契約形態であり、請負業者は、その目的達成のために自社の従業員を使用します。請負においては注文主と従業員の間に指揮命令関係が生じない、つまり直接、業務の指示や命令を行うことができないという点が大きなポイントになります。
2.適正な派遣と請負との区分に関する基準
派遣と請負の第一の判断基準は1.で示したとおりですが、その他にも以下のポイントがあります。請負が適正なものと判断されるためには以下のような項目を確認する必要があります。
(1)自己の雇用する従業員の労働力を直接利用するものであること
(a)業務遂行に関して仕事の割り付け、順序に関する指示や技術的指導、評価等について自ら行うこと。
(b)始業及び終業時刻、休憩、時間外労働の指示や管理などの労働時間管理を自ら行うこと。
(c)就業上の服務規律に関する指示、配置等の決定など企業秩序維持、確保のための指示その他の管理を自ら行うこと。
(2)請け負った業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理し、単なる労働力の提供であってはならないこと
(a)業務の処理に要する資金については、すべて自らの責任で調達すること。
(b)業務の処理について、事業主としてすべての責任を負うこと。
(c)業務の処理に使用する機械や設備、器材は自らが準備し、注文主からの借り入れにより業務を処理する場合には、そこに請負契約とは別個の有償の契約があること。以上のように、指揮命令関係が存在していなくても、自社の工場などで自社の従業員と請負会社の従業員が混在し、併せて労務管理が行われていたり、自社の機械や車両を請負会社が無償で利用しているような場合には、偽装請負と指摘される可能性がきわめて高くなります。
3.派遣における労働関係法令の適用
一方、派遣においては、二重の指揮命令関係を持つという特性から、派遣元、派遣先の会社が派遣労働者の管理責任を負います。労働時間や時間外労働、休日、休憩に関する責任は、日常の業務指示を派遣先から受け、賃金支払い、災害補償、一般健康診断等は、雇い主である派遣元が責任を負います。
改正労働者派遣法の施行に向けて、今後労働局による調査・指導等も増えてくることが予想されます。安易に契約形態を派遣から請負に変更するという対応ではなく、違いをきちんと理解した上で適正な方法をとることが求められます。また、現状の請負についても、基準に合致しているか、実態を確認しておく必要があるでしょう。