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【人事労務ニュース】 口座振込により賃金を支払う際に注意すべきポイント

 現在では多くの企業が、賃金を口座振込によって支払っています。しかし、原則として賃金は、直接従業員に通貨で支払わなければならないとされています。そのため、口座振込により賃金支払いを行うためには、いくつかの注意すべきポイントがあります。そこで今回は口座振込によって賃金を支払う際に、企業が注意すべき4つのポイントについてお伝えいたします。

[ポイント1]書面により従業員の個別の申出もしくは同意が必要
 口座振込によって賃金を支払うためには、書面による個々の従業員の申出もしくは同意が必要とされています。この書面には、口座振込等を希望する賃金の範囲およびその金額、指定する金融機関名ならびに預貯金の種類および口座番号、口座振込開始希望時期などを記載する必要があるとされています。よって実務としてはこの手続きを行うための書式を作成し、従業員が入社した際には必ず提出してもらう必要があります。なお、その書式の中には、口座振込に関する申出や同意がなされていることが分かる一文を記載しておくとよいでしょう。

[ポイント2]労使協定の締結が必要
 賃金の口座振込を行うためには、個々の従業員からの書面による申出や同意に先立ち、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者との労使協定を締結しなければなりません。労使協定には、対象となる労働者の範囲、賃金の範囲およびその金額、金融機関などの範囲を協定する必要があります。なお、この労使協定は労働基準監督署への届出は不要とされています。

[ポイント3]賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得る状況にあること
 金融機関を通して労働者に賃金を支払うことから、実務上は金融機関の営業日にも注意しなければなりません。通達においては、労働者が所定の賃金支払日の午前10時頃までには払い出し可能になっていなければならないとされているため、もしも賃金支払日が金融機関の休日に当たる場合には、前営業日には引出し可能な状態にしておくことが求められます。

[ポイント4]振込口座は従業員が指定する本人名義の口座であること
 企業としては、振込手数料を抑えるために賃金振込口座を自社のメインバンク一行のみに限定したいところです。しかし、賃金の振込口座を行う金融機関は、金融機関の所在状況等からして一行に限定せず、複数とすることなど、従業員の便宜に十分配慮して定めなければならないとされています。なお、稀に従業員から賃金を2つの口座に分けて振込みを行って欲しいという要望が寄せられることがありますが、これについては拒んだとしても問題はありません。


 以上が口座振込によって賃金を支払う際に注意すべきポイントです。賃金支払いは、原則として直接通貨で労働者に支払うことが求められていることを理解した上で、これらのポイントに注意して、適正に賃金の口座振込を行うことが求められます。 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。