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【人事労務ニュース】 2012年3月よりブラジル・スイスが発効となる社会保障協定の概要

 昨今、経済のグローバル化の進展により、中小企業においても海外進出が盛んに行なわれ、人的な国際交流が以前に増して活発となっています。そのような中、日本から海外へ派遣される日本人および外国から日本に派遣される外国人については、年金制度において以下の問題が生じています。

1.年金保険料の二重負担問題
 海外派遣者に関しては、通常、日本と相手国双方の年金制度への加入義務が同時に生じるため、海外に派遣されることで年金保険料(以下、「保険料」という)を二重に支払わなければならない。
2.年金受給資格の問題
 諸外国の公的年金制度についても日本と同様、老齢年金を受給するためには年金制度への一定期間の加入が必要となる場合がある。そのため、相手国に短期間派遣され、その期間だけ相手国の公的年金制度に加入したとしても、ほとんどの場合、老齢年金の受給資格要件を満たすことができない。よって、相手国で負担した保険料が掛け捨てとなってしまう。


 このような問題を解決するために、国家間で社会保障についての取り決めを行なうものが社会保障協定です。両国間において社会保障協定が締結されることにより、派遣期間が短い一時的な海外派遣者については、派遣先国での年金制度加入が免除され、原則として派遣元国の年金制度にのみに加入すればよいこととなります。さらには、それぞれの年金制度において両国での加入期間を通算し、受給要件を満たす場合には、それぞれの年金制度で老齢年金の受給資格を得ることができるようになります。

[現在締結されている社会保障協定]
 2012年2月現在、日本と諸外国との社会保障協定の発効状況は下表のとおりとなっています。昨年12月には、日本とブラジル、日本とスイスの両国間において社会保障協定における発効の準備が整い、ブラジル・スイスについても、2012年3月1日より日本との間の社会保障協定が発効されました。日本は既に12ヶ国と社会保障協定を締結し発効しているため、ここにブラジル・スイスが加わることで合計14ヶ国となります。なお、通常は保険料の二重負担防止および年金加入期間の通算のいずれについても協定の締結が行われますが、イギリス、韓国およびイタリアについては、保険料の二重負担防止のみの締結に止まっています。

 
社会保障協定発効済ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、
オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド
2012年3月1日発効ブラジル スイス
発効準備中イタリア(2009年2月協定締結済)
政府間で交渉中ハンガリー、ルクセンブルク、インド、スウェーデン、中国
予備協議中等スロバキア、オーストリア、フィリピン
※イギリス、韓国、イタリアについては保険料の二重負担防止のみ
 

 社会保障協定の発効は、企業および海外派遣者の年金保険料負担が軽減されるというメリットがあることから、今回の発効によりブラジル・スイスとは、年金制度の面において、以前より人的交流が促進されることでしょう。なお、現在、日本と人的交流がもっとも多い中国との間の社会保障協定は、2011年10月より協議が開始されたばかりで未だ締結がなされていません。日本企業の現地進出増加により在留邦人数が世界第2位(外務省「海外残留邦人数統計」2010年10月1日現在)となっているだけに、その早期締結が望まれます。


 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。